業務用エアコンの選び方!床面積にあった馬力と業種別の選び方、工事費用を徹底解説!
2020年8月18日 更新業務用エアコンの導入を検討しているけど、何を基準に選べばいいか分からない…そんな方は多いと思います。家庭用エアコンなら部屋の大きさに合わせて簡単に選ぶことができますが、業務用エアコンの場合、「馬力」というエアコンの能力から選びます。
業務用エアコンを設置する場所は、広い工場や病院、また個人経営の美容室や飲食店などさまざま。その店舗にあったエアコンを導入しないと、エアコンの効きが悪い、電気代がかさんでしまうなど、思っていたのと違う結果になってしまうことも。
今回は、失敗しない業務用エアコンの選び方を紹介します。業務用エアコンのタイプによるメリットや、最適な馬力の選び方、業種別のエアコンの選び方を詳しく解説!エアコン選びの参考にしてみてください。
目次
1 業務用エアコンの形
業務用エアコンには、大きく2つのタイプがあります。1つが、天井に埋め込まれている「天井埋込型」。もう1つはエアコン本体が室内に設置されている「露出タイプ」。これらのエアコンのタイプによってメリットやデメリットがあります。
天井埋込タイプは、エアコン本体が天井の中にあるため、室内の内観を損なうことなく設置出来るところがメリット。天井埋込タイプには、カセット型とダクト型・ビルトイン型があります。露出タイプには、天井吊り下げ型・壁掛け型・床置き型の3種類があり、天井に埋め込むことができない店舗にも設置が可能。天井埋込型よりも設置費用が安いので、導入しやすいところがメリットと言えるでしょう。
1.1 天井埋込カセット型
業務用エアコンではおなじみのこのタイプ。カセット形には吹き出し口の数に違いがあり、「4方向」「2方向」「1方向」の3種類が販売されています。4方向は部屋全体にムラなくエアコンの風が行き渡り、風当りは非常にマイルドです。
2方向は、見た目がスッキリとしていてオフィスの照明と調和します。4方向よりも本体が小さめなので、狭い部屋や細長い部屋におすすめ。1方向は、設置場所が部屋の隅の場合におすすめのタイプ。風の吹き出し方を下方・前方と変更が可能。吹き出す方向を設定できるので、高い天井の部屋にもおすすめです。
1.2 天井埋込ダクト型
ダクト型は、エアコン本体を天井内に埋め込み、吹き出し口と室内の空気の吸い込み口をお好みの場所に設置できるタイプ。エアコンが設置してあることが分かりにくいため、外観を重視するホテルやショップにおすすめです。
1.3 天井埋込ビルトイン型
ダクト型のようにエアコン本体を天井内に埋め込み、本体からダクトを伸ばして吹き出し口を様々なところに設置可能。吹き出し口をお好みの場所に設置できるので、デザイン性を重視しているお店や理・美容室におすすめ。
1.4 天井吊り下げ型
天井にエアコンを埋め込めない時に選ばれるタイプ。天井にエアコン本体を吊って設置。吹き出し口は1方向のみです。天井埋込型を設置できない店舗や学校によく設置されています。
1.5 壁掛け型
壁掛け型は、家庭用エアコンのように壁に設置するタイプ。家庭用エアコンよりも馬力のあるエアコンです。天井に設置するタイプよりも設置費用が安く、メンテナンスがしやすいところがメリット。
1.6 床置き型
床に直接設置するタイプのエアコン。設置費用が他の業務用エアコンよりも安く、気軽に導入できるところがメリット。メンテナンスもしやすいので、店舗から工場まで幅広く設置されています。
2 床面積から最適な「馬力」を選ぶ
業務用エアコンを導入したいけども、いろいろな種類があって迷ってしまう方は多いと思います。また、家庭用エアコンと違い「〇畳用」などの記載がなく、何を基準に選んでいいのか分かりにくい部分も。ここでは、業務用エアコンの能力「馬力」を解説。部屋の大きさから、最適な馬力の選び方を紹介します。
「馬力」とは、業務用エアコンの能力を表しています。「馬力」の数字が大きいほど、能力の高いエアコンと言えるのです。最適な業務用エアコンを選ぶためには、お店やオフィスの床面積にあった馬力のエアコンを選ぶ必要があります。
最適な馬力を持つエアコンを選ばないと、設定温度に達する力が足りないため、なかなか冷房や暖房が効かないという事に。また、馬力がないエアコンだと、いつでもフル稼働している状態になり、かえって電気代がかかってしまいます。それから、いつもフル稼働しているとエアコンに負荷がかかり、最適なエアコンを設置したときよりも早く故障してしまう可能性も。
では、最適な業務エアコンの馬力を選ぶためには、どのようにしたらいいのでしょうか?それには、お使いになる部屋の冷暖房負荷を計算する必要があります。冷暖房負荷を計算するには、日射や部屋の中にいる人、照明などの室内で発生する熱負荷を計算して求めます。
【計算式】 床面積(㎡) × 算出基準負荷(W/㎡) = 冷暖房負荷(kW)
業種 | 算出基準負荷 |
---|---|
事務所・オフィス | 105~230 W/㎡ |
商店・店舗 | 160~180 W/㎡ |
飲食店 | 190~370 W/㎡ |
理美容 | 230~290 W/㎡ |
工場 | 230~290 W/㎡ |
病院 | 190~230 W/㎡ |
床面積と算出基準負荷で導き出された冷暖房負荷を参考に、最適なエアコンの馬力を選びます。例えば、15.0 kWであった場合は、6馬力のエアコンを選びます。
【熱負荷対応表】
馬力 | 冷暖房負荷 |
---|---|
1.5馬力(P40形) | 1.6~4.0 kW(1600~4000W) |
1.8馬力(P45形) | 1.7~4.5 kW(1700~4500W) |
2馬力(P50形) | 1.8~5.0 kW(1800~5000W) |
2.3馬力(P56形) | 1.8~5.6 kW(1800~5600W) |
2.5馬力(P63形) | 1.8~6.3 kW(1800~6300W) |
3馬力(P80形) | 2.3~8.0 kW(2300~8000W) |
4馬力(P112形) | 4.3~11.2 kW(4300~11200W) |
5馬力(P140形) | 5.5~14.0 kW(5500~14000W) |
6馬力(P160形) | 5.5~16.0 kW(5500~16000W) |
8馬力(P40形) | 7.5~22.4 kW(7500~22400W) |
10馬力(P280形) | 9.1~28.0 kW(9100~28000W) |
3 【業種別】最適なエアコン選び
ここまでは、床面積と業種別の熱負荷によるエアコンの選び方を紹介してきました。しかし、エアコンを設置するお店や事務所によって、エアコンを使用する環境はさまざま。例えば、同じ飲食店でも、提供する料理によって最適なエアコンの選び方が変わってくるのです。ここでは、業種別におすすめのエアコン能力や機能をまとめてみました。エアコン選びの参考にしてみてください。
3.1 事務所・オフィス
オフィスはデスクワークをする方が大半。ですので、オフィス内の温度のムラを抑えたり、風が直接当たらないように自動で風向きを変えてくれる、人感センサー付きのエアコンがおすすめ。また、空気清浄機能で空気を清潔に保つことで、働きやすい環境に。また、スペースが細かくパーテーションで仕切られていたり、会議室などの個室が多いオフィスであれば、部屋ごとに温度調整ができるエアコンを選ぶと電気代の節約になるでしょう。
3.2 商店・店舗
商品を販売している店舗は、小売店のような小規模の商店から大型スーパーマーケットなどさまざまな大きさの店舗があります。商店や店舗のエアコン選びでは、店舗の広さにあったものを選びましょう。店舗の広さにあっていないエアコンを設置してしまうと、馬力が足りずエアコンが効かない…ということになりかねません。
また、商店や店舗は営業時間が長いので、エアコンにかかる電気代も心配。そこで、省エネに特化したエアコンを選べば、電気代を節約でき経費がかかりすぎることがなくなります。また、おしゃれな雑貨をおくショップでは、店内の雰囲気も大事。そのような場合は、売り場の見た目を損なわない天井埋込型がおすすめです。
それから、珍しい機能として、ダイキンの「みまもりZEAS」を紹介します。この機能は、お客様がそばを通ると、人感センサーが働きライトが点灯する機能。この機能を設定しておけば、おすすめの商品のそばをお客様が通ったときに、商品を自動で照らしてアピールすることができ、便利です。
3.3 飲食店
飲食店では、お客様が居心地よく過ごしていただけるような環境を作る事が大切。人感センサー付きのエアコンなら、出入りの多い入口から店内の奥まで、温度のムラを無くすことができます。
また、提供している料理や調理方法によっても、最適なエアコンが変わってきます。焼肉店やお好み焼きなどの鉄板焼きを提供するお店や、ちゃんこ鍋やすき焼きといった鍋物を出す店では、お客様がテーブルで調理をするため室温が上がりがち。また、調理した煙りが立ちのぼったり、食材を焼いたニオイも発生します。
このような料理を提供するお店では、通常の飲食店よりも馬力のあるエアコンを設置して、しっかりと店内を冷やさないといけません。また、煙やニオイを吸い取ってくれる空気清浄機能付きエアコンを選べば、気になる店内のニオイもしっかり脱臭してくれます。また、厨房に設置するエアコンは、油汚れに強い専用のエアコンを選びましょう。
3.4 理・美容室
理容室や美容室は、ドライヤーやパーマをかける機器やシャンプーにつかう給湯器などがあり、思った以上に室温が上がります。ですので、理・美容室に設置するエアコンは、通常の店舗より大きい馬力のものがおすすめ。
また、理・美容室は、お客様が同じ場所にずっと座っている事が多い業種。お客様に直接エアコンの風が当たると、冷えすぎてしまったり…と居心地が悪くなってしまいます。お客様に直接風が当たらないように、設置場所を工夫したり、人感センサー付きエアコンを選びましょう。
理・美容室は、内装にこだわったおしゃれなお店が多いのが特徴。そこで、おしゃれな店内の雰囲気を損なわない、天井埋込型のエアコンがおすすめです。
3.5 工場・倉庫
工場や倉庫に業務用エアコンを設置する時に一番気を付けたいのは、設置場所の床面積。広い工場にはその広さにあった馬力のあるエアコンを選ばないと、せっかく設置したのにまったくエアコンが効かないということになりかねません。
3.6 病院
病院に設置する業務エアコンは、薬品などのニオイを脱臭できる空気清浄機能付きエアコンがおすすめ。また、ウイルスや細菌を除去できる除菌機能が付いているものを選ぶ方が多いのが特徴です。
4 業務用エアコンの機能
ここでは、あると便利な業務用エアコンの機能を紹介します。
4.1 空調機能
【個別運転機能】
個別運転機能がついたエアコンであれば、使用していない部屋のエアコンだけ電源をOFFにしたり、部屋ごとに温度設定が可能。複合施設では、ビル全体で設定温度が決まっており、フロアによっては冷えすぎてしまうことも。しかし、この機能があれば冷えすぎを解消できます。また、こまめに温度設定を変えられるので、無駄な電力を使わず省エネ効果も抜群です。
【空気清浄機能】
パナソニックであれば、業務用エアコンにも「ナノイー」が搭載されています。また、ダイキンの「光速ストリーマ」は、ストリーマ技術と光触媒技術で、悪臭や微生物を強力に除去する脱臭ユニットが搭載されており、エアコン使用時はもちろん、使用していない時も空気清浄機として大活躍してくれます。
【センサー機能】
人のいる方向への送風を弱めたり、人や床の温度を感知して室内の温度のムラを自動で調整。温度調整をしなくても、自動で店内を快適に保ってくれる機能です。接客を伴う業種や、オフィスにおすすめ。
4.2 掃除機能
【自動お掃除機能】
1日1 回フィルターを自動で掃除する機能。毎日、自動的に掃除をしてくれるので、いつも清潔な空気を維持できます。また、フィルターの目詰まりを防ぎ、運転能力の低下や、電気代の高騰を防止する効果も。
【昇降パネル】
昇降パネルとは、電動の昇降機が搭載されていて、フィルターの取り外しが不要。フィルターが自動で降りてくるので、フィルターを掃除する時に脚立を使用することなく掃除ができます。フィルター掃除は定期的に行うものなので、お掃除がしやすい機種を選びたいものです。
4.3 省エネ機能
【運転状況をネットで確認できる】
運転状況を見やすいグラフで確認できるので、運転の無駄が分かりやすいところがメリット。簡単操作で運転スケジュールを変更できます。エアコンの無駄をなくし、省エネ運転をしたい方におすすめです。
【集中管理機能】
集中管理機能とは、1台でエアコンや換気扇など、さまざまな設備を一括管理できる機能。1つの画面で管理できるので、無駄のない空調管理が可能です。大きなショッピングセンターや工場、たくさんの部屋からなるオフィスなどにおすすめです。
5 業務用エアコンの設置工事費用
業務用エアコンの設置費用は、エアコンのタイプによって変わってきます。一番安く設置できるのは床置型。設置工事の費用は、5~10万円程度で設置可能。次に設置費用が安いのは壁掛け型。新規の設置工事で10~15万円、取り替え工事では5~10万円が相場と言われています。
天井吊型の設置工事費は埋込型より安く、7~10万円程。ただし、大型のものになると工事費が高くなり、15万円以上かかってしまうことも。最後に天井埋込型ですが、業務用エアコンの中では一番設置工事費用が高くなります。新規設置で20~30万円、取り替え工事でも10~20万円かかるでしょう。
また、業務用エアコンの設置では、「シングル」「ツイン」「トリプル」といった設置方法があります。これは、室外機1台に対して室内機を何台設置するかということ。また「同時ツイン」や「個別ツイン」といった表現もあり、「同時」はリモコンが1つ。「個別」は室内機分のリモコンが付いているという意味。室内機とリモコンが多くなればなるほど、設置工事費は高くなります。
6 まとめ
エアコンの形・部屋の大きさ・業種別に、最適なエアコンについて解説してきました。業務用エアコンは、設置場所にあった最適な能力を持ったエアコンと選ぶことが、失敗しない秘訣。そのためには、部屋の広さや部屋を使う人の人数。そして、どのようにその部屋を使用するのか…を考慮して選ぶ必要があります。
その目安として「冷暖房負荷」を計算する方法がありますが、設置業者に相談しても冷暖房負荷を計算し、最適なエアコンを紹介してくれます。迷ったときは専門業者に相談してみましょう。業務用エアコンは決して安い買い物ではありません。この記事を参考に、設置場所にあったエアコンを選びましょう。