業務用エアコンの電気代はいくら?設定温度による光熱費の計算方法
2019年9月18日 更新業務用エアコンはオフィスや店舗には欠かせない設備です。しかし、業務用エアコンは、人の出入りが多かったりパソコンなどの機器が熱を出していたりするところで使うため、電気代が高くなりそうで不安になりますよね。
そこで、業務用エアコンの電気代を計算する方法を解説します。設定温度による光熱費の違いや電気代を節約する方法なども解説するので、業務用エアコンを導入するときの参考にしてください。
目次
1 業務用エアコンの電気代の計算方法
業務用エアコンの電気代の計算方法は、基本的には家庭用エアコンの電気代を計算する方法と同じ。ポイントになるのは、使っている業務用エアコンの消費電力と契約している電気料金の単価、業務用エアコンの使用時間です。
1.1 業務用エアコンの電気代の計算方法
電気代は、業務用エアコンでも家庭用エアコンでも基本的には同じ計算方法。ただし、業務用エアコンと家庭用エアコンでは電力契約の内容が異なるので、注意が必要となります。
業務用エアコンの電気代を計算する場合は、次の計算式を使います。
- 電気代(円)=消費電力(kW)×電力量料金(円/kWh)×時間(h)
消費電力は使っている電気機器が消費する電力。多くの電気製品は消費電力の目安や定格消費電力などが表記されていますが、業務用エアコン場合は記載されていないこともあります。業務用エアコンのメーカーなどに確認してみるか、業務用エアコンの詳細な仕様が記載されたデータを確認しましょう。
電力量料金は、いわゆる電気料金の単価のこと。単純に「単価」と表現することもありますし、電気料金単価ということもあります。電力会社のホームページと契約内容を照らし合わせると、電力量料金として「1kWhあたりの電気料金」が記載されています。
最後に、業務用エアコンを使う時間をかけることで電気代が計算可能。時間を「1」にすると、1時間あたりの電気代が分かります。また、30分という場合は「0.5時間」というように、時間に単位を合わせることも重要なポイントです。
具体的な例を使って計算してみましょう。業務用エアコンは様々なメーカーが販売していますが、ここではパナソニックの「4方向天井カセット形」という一般的な業務用エアコンで考えています。
業務用エアコンの構成リスト(品番) | 種類 |
---|---|
CS-P112U6 | 店舗用4方向天井カセット形 |
CU-P112H6 | 店舗用室外機(標準) |
CZ-10RT4C | ワイヤードリモコン |
CZ-160KPEU5 | 天井パネル(4方向)エコナビ |
一般的なオフィスや店舗で使う業務用エアコンの能力は「馬力」という単位で表されることがよくあります。広さによって選ぶ能力は変える必要があるため、ここでは例として「4馬力」の業務用エアコンを計算に用いています。
さて、上記のような構成で業務用エアコンを設置した場合、業務用エアコンの能力や消費電力は次のようになります。
4方向天井カセット形(PA-P112U6H) | |
---|---|
冷房定格能力(kW) | 10.0 |
暖房定格能力(kW) | 11.2 |
冷房定格:消費電力(kW) | 2.84 |
暖房定格:消費電力(kW) | 2.53 |
備考 |
|
業務用エアコンでも、家庭用エアコンと同じで外気温や使用状況で能力・消費電力が変わります。業務用エアコンの電源を入れると最大能力で運転を始めるため、消費電力は最大となるのです。そのため、ここでは定格運転をしているときの「定格能力」と「定格消費電力」のみを表記。そのほかの詳細なデータについては割愛しています。
電力量料金は東京電力の低圧電力契約の単価を使用。夏季は「17.06円」で、そのほかは「15.51円」、基本料金が「1101.60円」です。これと定格運転時の定格消費電力を使って、夏場の1時間あたりの電気代を計算すると、以下のようになります。
- 電気代(円)=2.84(kW)×17.06(円/kWh)×1(h)=48.45(円)
つまり、パナソニックの4馬力の業務用エアコンを使った場合、夏場は1時間あたりの電気代が「約48.45円」となります。オフィスの業務時間として10時間使っても、電気代は約485円。業務用エアコンの電気代は高いような気がしますが、実際には1日あたりワンコインほど済みます。そこまで高くはないですよね。
1.2 エアコンの能力と消費電力は違う!
業務用エアコンの電気代を計算する場合、最も注意が必要なのが消費電力。業務用エアコンに詳しくない人や物理・化学などに明るくない人は、業務用エアコンの能力と消費電力を混同してしまいがちなのです。
業務用エアコンの能力は馬力で示されますが、数学的には「1馬力=約0.7355kW」となります。しかし、業務用エアコンで使われている馬力は「1馬力=約2.8kW」と考えるのが一般的。しかも、この業務用エアコンの能力には「kW」という消費電力と同じ単位が使われるため、混同してしまうのです。
実際には業務用エアコンの馬力は消費電力とは一切関係がなく、室内から取り除くことができる熱エネルギー、または室内に加えることができる熱エネルギーを表しています。ですから、業務用エアコンの電気代を計算する場合には、エアコンの冷房能力や暖房能力を使わずに消費電力を使うように気をつけてくださいね。
2 設定温度で光熱費に違いは出る?
業務用エアコンを使う場合、どうしても電気代が気になりますよね。そこで、業務用エアコンの設定温度による光熱費の違いや電気代を安くする方法などを解説。
2.1 設定温度で光熱費は変わる?
業務用エアコンに限らず、エアコンは外気温と室内の温度に差があれば、それだけ温度を上下させるために多くの電気を使います。ですから、冷房で設定温度を1度高くしたり、暖房で設定温度を1度低くしたりするだけでも大きな節約効果があるのです。
使用する業務用エアコンの性能によっても異なりますが、設定温度を1度上下させるだけで光熱費は約10%削減可能。ただし、2度3度と下げてしまうとエアコンの効果がなくなってしまうため、適度に変えるくらいがちょうど良いと言えます。
また、オフィスで設定温度を変えてしまうと、業務効率が低下するおそれもあります。店舗の場合は、客足に影響するおそれもあるでしょう。そこで、ポイントごとに業務用エアコンの設定温度を変えていく方法が推奨されています。
例えば、店舗の場合、店舗スペースでは設定温度を変更せず、スタッフがいる事務所などの設定温度を変更。つまり、快適性を保つ必要がある場所に優先順位をつけて、優先順位が低い場所から設定温度を変えて業務用エアコンの電気代を安くするという方法なのです。上手に活用すれば、店舗スペースの快適性を保ったままで光熱費の削減をすることも実現できますよ。
また、業務用エアコンの冷房・暖房能力や消費電力は、次のような条件で算出されています。
冷房能力 | 標準暖房能力 | |||
---|---|---|---|---|
室内 | 室外 | 室内 | 室外 | |
乾球温度計 | 27℃ | 35℃ | 20℃ | 7℃ |
湿球温度計 | 19℃ | ― | ― | 6℃ |
こちらは「資源エネルギー庁」のホームページで公開されている「業務用エアコンの用語解説」の一部を抜粋したものです。
資源エネルギー庁によれば、上記の条件で業務用エアコンを運転したときに示される値が「冷房・暖房能力」とされています。つまり、夏場は「室温27度」を目安にして、冬場は「室温20度」を目安にすると、カタログなどで示される業務用エアコンの能力になると考えられます。ただし、近年の夏の外気温は35度を優に超えるため、もう少し調節しても良いかも知れませんね。
2.2 業務用エアコンの光熱費を節約する方法
設定温度を変更する以外にも、光熱費を節約する方法はあります。そこで、業務用エアコンの電気代や光熱費を節約する方法を紹介。
- エアコンフィルターの定期的な掃除
- 室外機に打ち水をする
- 省エネや節電機能がある業務用エアコンを導入する
最も基本的なことですが、フィルターが汚れていると業務用エアコンの効率は落ちてしまいます。これは家庭用エアコンでも同じ。少なくとも、定期的にエアコンフィルターを掃除するようにしておきましょう。
また、業務用エアコンの内部(熱交換器など)を清掃することで消費電力を抑えられて光熱費の節約が可能。例えば、業務用エアコンの大手であるダイキンには業務用エアコンの内部を洗浄するサービスがあり、このサービスを利用すると機器内部のメンテナンスなども同時に行ってくれます。一石二鳥のサービスなので、ダイキンの業務用エアコンを使っている場合は利用するというのも良いでしょう。ほかのメーカーでも業務用エアコンの内部を掃除すると、消費電力を抑制できるため、光熱費を節約したい場合は試してみましょう。
室外機を冷やせば、エアコンの冷房能力が向上するのはよく知られています。業務用エアコンでも同じですので、室外機に打ち水をするというのも試してみましょう。なかには、自動的に業務用エアコンの室外機に冷却水を噴霧してくれる機器などもあるため、様々な選択肢を検討してみることが重要です。
最後に、最新の省エネや節電機能がある業務用エアコンに交換する方法もあります。業務用エアコンは比較的長持ちするため、古い業務用エアコンを使い続けてしまうこともよくあるのです。しかし、古い業務用エアコンの光熱費が高いのは明白。新しくするだけでも、多少は光熱費の節約になりますよ。
また、最新の省エネや節電機能は優れており、効率的に節約することが可能。効果的な節電で光熱費を安くしたい場合は、新しい業務用エアコンにするというのも良い選択になりますよ。
3 まとめ
業務用エアコンの電気代を計算する方法について解説しました。業務用エアコンも家庭用エアコンと同じで、設定温度を変えることで光熱費を節約することが可能です。ただし、オフィスや店舗の場合は業務効率や客足に影響が出ることもあるので、十分に検討してから行いましょう。