ハウジング・マルチエアコンの種類および導入・設置するメリットとデメリットについて
2021年9月22日 更新一般的に家庭用のエアコンと言えば壁掛けタイプになりますが、このタイプのエアコンをルームエアコンと呼んでいます。それに対して、例えば天井への埋め込み型のエアコンなど、ルームエアコン以外のエアコンを総称してハウジングエアコンと呼びます。
ここでは、ハウジングエアコンを検討している方の参考になるように、ハウジングエアコンの種類とメリットやデメリットについて詳しく解説をしていきます。
目次
1 ハウジングエアコンとは
ハウジングエアコンとは、住宅のインテリアとの調和を考えてられている空調機器のことを言います。ハウジングエアコンは主に天井や壁に埋め込まれており、室内機と室外機をつないでいる配管が壁や天井内を通っているため、部屋をスッキリと見せることができるものになります。
たとえば純和風なお部屋の場合、ルームエアコンではその部分が浮いてしまいますよね。埋め込みタイプのものでなくても、ハウジングエアコンは設置場所の自由度が高く、さりげない場所にそっと設置することが可能です。ハウジングエアコンなら、室内のイメージを損なうことなく、快適な空間を実現することが出来るのです。
2 ハウジングエアコンの種類
ハウジングエアコンには先にもお伝えしたように、壁や天井への埋め込みタイプのものがありますが、その他に床への据え置きタイプがあります。開放的な広々としたリビングにしたい、インテリアを統一してまとめたい、効率よく空調を聞かせたいなどの希望にそって、壁・天井埋め込みタイプや床据え置きタイプを選択するのが良いでしょう。
2.1 天井埋め込みタイプ
天井埋め込みタイプは、本体が天井に埋め込まれており天井がフラットな状態になるため、エアコンの存在が目立ち過ぎずスッキリとした印象になります。例えば、インテリア性を損ないたくない広い室内に向いています。
風の吹き出しの向きとしては1方向・2方向・4方向と3種類あり、1方向の場合には天井の隅に設置することができますが、2方向・4方向になると天井の中央に設置するのが良いでしょう。なお、一般住宅に設置する場合には2方向のものが多くなります。空気の吸い込みグリルは取り外しての水洗いも可能となっています。
2.2 壁埋め込みタイプ
壁埋め込みタイプは、本体が壁に埋め込まれており壁がフラットな状態になるため、天井埋め込みタイプと同じようにエアコンの存在が目立つことなくスッキリとした仕上がりとなります。また、風の吹き出し口であるグリルは洋室用と和室用があり、インテリアに調和します。空気の吸い込みグリルは取り外しての水洗いも可能となっています。
2.3 床据え置きタイプ
天井が高い部屋の場合、暖房が必要な季節では暖かい空気は上へあがってしまうので足元が暖まらないといったこともありますが、床据え置きタイプの場合には足元から暖かい風が吹き出しますので、足元も部屋全体も暖まります。また、半埋込設置も可能ですので省スペースでの設置が可能です。
3 ハウジングエアコンのメリット
ハウジングエアコンの設置を検討する場合には、後で後悔をしないようにメリットやデメリットをしっかり確認することが必要です。では、ハウジングエアコンのメリットにはどのようなことがあるかを見ていきましょう。
3.1 インテリアを邪魔しない
まず、天井埋め込みタイプや壁埋め込みタイプの場合には、天井や壁がフラットな状態となり部屋のインテリアを邪魔しないという点が大きなメリットとなるでしょう。一般的に広いリビングになると壁掛タイプの場合にはエアコン本体も比例して大きくなってしまい、エアコンが目立ってしまうことになりかねません。しかし、本体が天井や壁に埋め込まれていればエアコン本体の主張がされない分、部屋のデザイン性が高まるのは大きな魅力ですね。
また、和室などの雰囲気には壁埋め込みタイプがよく馴染みます。エアコンのパネルは木目などもあるため、和の雰囲気を損ないません。床据え置きタイプの場合には、キッチンやカウンター下にスッキリおさまり、省スペースに設置が可能です。
3.2 効率的な冷暖房が可能
広いリビングなどにエアコンを設置する場合には、本体も大きなパワーのあるエアコンを設置しますね。しかし、設置位置によっては部屋の隅々まで冷暖房が届かない場合もあります。せっかく部屋の広さに合わせて大きなエアコンを設置しても、これではもったいないことになりますね。
しかし、天井埋め込みタイプの場合には部屋の真ん中あたりに設置が可能になるため、そこから2方向または4方向に風を送ることができます。つまり、効率的に部屋を冷やしたり暖めたりすることができることになります。これによって、エアコンの電気代を節約することも可能となってきます。
3.3 室外機を1つにまとめることができる
埋め込みタイプのエアコンは、天井や壁の中に配管などを設置することができますので、室外機を外観の目立たない場所に設置することが可能です。さらに、1台の室外機で複数のエアコンを設置するマルチエアコンにすることも可能です。ルームエアコンのように本体1台につき室外機1台のばあいですと、家の外観が室外機だらけになることもありますが、1台の室外機のみで済めば、それだけ室外機の設置場所に頭を悩ませる必要もありません。
4 ハウジングエアコンのデメリット
では、ハウジングエアコンのデメリットについても確認していきましょう。
4.1 選択肢が少ない
壁掛タイプのルームエアコンには多くの商品が販売されており、重視する機能性を選んで選択することが可能です。しかし、家庭用のハウジングエアコンはまだ歴史が浅く商品数が少ないため、選択肢が限られてしまいます。
4.2 設置場所が難しい
天井埋め込みタイプの場合には、天井に存在する照明との配置バランスが難しくなる場合があります。例えば、一般的に照明は天井の中心に設置することが多いですよね。しかし、天井埋め込みタイプのエアコンもできれば中央に設置するのが効果的です。こうなると、エアコンの位置を重視するのか照明の位置を重視するのか選択しなければならなくなります。
4.3 設置工事費用や天井のリフォーム費用がかかる
家の新築で新規設置をする場合や、リフォームなどのタイミングでの後付け設置をする場合などであればそれほど問題はありませんが、後付けの場合は天井や壁に穴を開けなければなりませんので、かなり大掛かりなリフォーム工事が必要となってきます。もちろん、天井にある程度のスペースも必要となります。
単純に交換をするだけであれば設置時間も費用も抑えられますが、リフォーム工事が必要な場合にはかなり費用がかかることになります。
4.4 トラブル時の費用がかかる可能性がある
天井埋め込みタイプや壁埋め込みタイプの場合には、エアコンの故障やトラブルなどがあると、天井裏や壁内部に対してダメージがかかる可能性があります。例えば、エアコンの排水が漏れてしまった場合、天井や壁からの水漏れや腐敗などが起これば家の修理費用がかかることになりかねません。このような場合には、天井裏の修理費用がかかることになります。
4.5 メンテナンス費用がかかる
天井埋め込みタイプや壁埋め込みタイプの場合には、埋め込まれてしまっている状態のためメンテナンスが難しくなります。例えば、フィルターの掃除をするだけでも大変です。面倒だと放置しておくと、エアコンの効きが悪くなるため設定気温を下げ過ぎたり上げ過ぎたりすることになります。電気代の無駄が出てきますね。もちろん、専門業者へのメンテナンスの依頼をしても費用が高くなる可能性もあります。
最近では自己メンテナンス機能が付いているものも販売していますが、ある程度のメンテナンスはご自身で行う必要があります。面倒でもメンテナンスはこまめにする必要があるでしょう。
4.6 固定資産税がかかる
天井埋め込みタイプや壁埋め込みタイプのエアコンは、新築時に設置されている場合には固定資産の評価対象となるため、固定資産税が上がります。これはエアコンが建物の一部で償却資産と考えられるためです。税額の算出は以下の計算式になりますので、目安にしてみて下さい。
税額=課税評価額×1.4%
5 ハウジングエアコンの選び方
ハウジングエアコンを選ぶ場合のポイントは次の3つです。
- ハウジングエアコンの形状と設置場所を見極める
- 設置個所に適した能力に合ったハウジングエアコンを選ぶ
- メーカーごとの機能を確認してメンテナンスが簡単なものを選ぶ
5.1 ハウジングエアコンの形状と設置場所を見極める
ハウジングエアコンには天井埋め込みタイプ・壁埋め込みタイプ・床置きタイプの3つがありましたね。それぞれの特徴をしっかり把握した上で設置する場所に合ったものを選ぶようにしましょう。
【天井埋め込みタイプ】
2方向に風が出るタイプで風量バランスの切り替えが可能となります。
メリット | デメリット |
---|---|
2方向では細長い空間に、4方向では広い空間に最適 | 1方向の場合エアコンの真下・両サイドには風が届きにくい |
照明とのバランスがとりやすい | 天井に穴をあける必要があり、天井裏のスペースも必要となる |
メーカーによっては色を選べる | 天井の高さが5m以上の場合は足元に風が届かない |
【壁埋め込みタイプ】
メリット | デメリット |
---|---|
レイアウトやデザイナーズ物件などに柔軟に対応が可能 | 壁に穴をあける必要があり、壁内のスペースが必要 |
インテリアの雰囲気に合わせることができる | メンテナンスが難しい |
天井と一体化できる |
【床置きタイプ】
メリット | デメリット |
---|---|
足元に風を送ることができる | 1方向のみに風が行くため室温のムラができやすい |
取り付けが簡単で設置費用が安い | 設置スペースが必要 |
メンテナンスがしやすい | 配管が見えてしまう |
5.2 設置個所に適した能力に合ったハウジングエアコンを選ぶ
エアコンの能力は、部屋の広さだけでなく木造なのか鉄筋なのかによっても変わりますが、部屋の状態によっても異なってきます。特に熱い夏の時期の冷房は、状態によってはひと回り能力の大きなハウジングエアコンを選ばなければ、冷房が効かないといったことになりかねません。立地や構造なども考慮して能力に合ったものを選ぶことが大切です。
下記のような場合には、能力が大きめのものを選びましょう。
- 吹き抜け天井
- 窓が大きい
- 最上階
- 西日が当たる
- リビングダイニングキッチン
- 設置の配管が長い
吹き抜け天井の場合は、暖気が上へあがるため暖房の効きが悪くなります。また、大きな窓や最上階・西日が当たる部屋などは、熱気が窓や屋根・屋上から入ってきますので冷房の効きが悪くなります。さらに、冷媒が運ばれる配管が長い場合には効率が下がります。
5.3 メーカーごとの機能を確認してメンテナンスが簡単なものを選ぶ
最近のハウジングエアコンも、省エネ性が高くなっていたり窓から伝わる熱気や冷気を抑えるための機能も付いていたりと、快適性が良くなっています。また、フィルターの自動掃除機能などが付いているものも販売されています。快適性はもちろんですが、自動掃除機能が付いている場合は、普段の手入れが簡単になります。特に天井埋め込みタイプや壁埋め込みタイプはメンテナンスが面倒な場合が多いですので、こうした掃除機能が付いているタイプのものを選ぶのがおすすめです。
6 ハウジングエアコンの専門業者を見極めること
ハウジングエアコンはルームエアコンのように一般的ではありませんので、業務用エアコンやハウジングエアコンなどの取扱いが豊富な専門業者を見極めることが重要です。機器の選定や設置工事についての相談ができる専門業者を選びましょう。調査や見積もりを無料で行っているところもありますので、まずは相談をするのが良いですね。
7 まとめ
ハウジングエアコンのシェアはまだそれほど多い方ではありませんが、選ぶ人も増えてきています。メリットやデメリット、特徴などを見極めて選ぶようにしましょう。また、ハウジングエアコンを取り扱う専門業者は、経験が豊富な業者を選ばなければメンテナンスが面倒になることもありますので、見極めることが重要です。