室外機を1台にまとめるマルチエアコンのメリット・デメリットを解説!
2020年7月21日 更新複数台のエアコンを導入すると室外機も同じ数だけ設置が必要となりますね。エアコンの台数が多くなるほど、室外機の置き場所にも困ることが少なくありません。マルチエアコンでそんな悩みは解消する可能性がありますよ。マルチエアコンは1台の室外機に対して複数のエアコンを接続することができます。しかし、導入の際にはメリットの他にデメリットも知っておかないと後悔することもあります。ここでは、マルチエアコンの仕組みやメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
目次
1 マルチエアコンとは?
一般的なセパレートエアコンは、室内機1台に対して室外機は1台付いていますよね。それに対してマルチエアコンとは、室外機は1台ですが室内機を複数台接続して使用することができるエアコンのことをいいます。つまり、2部屋のエアコンの室外機を1つにまとめることができるのです。
1.1 マルチエアコンの仕組み
では、マルチエアコンはどのような仕組みとなっているのでしょうか。一般的なセパレートエアコンであれば、室外機と室内機は1台ずつ対になっていますから、1台分の馬力があれば良いのですが、マルチエアコンでは複数台の室内機を1台の室外機で稼働するため、一般的なセパレートエアコンの室外機よりも大きな馬力で稼働することになります。そのため、セパレートエアコンの室外機よりもマルチエアコンの室外機は一回り大きなサイズとなります。
もちろん、室内機の台数や使用状況によって大きさは異なります。例えば室内機2台の設置でリビングと寝室の場合だと、それぞれの部屋で同時にフル稼働することは少ないですので、大きな容量の室内機に近い容量の室外機の能力で良いため、それほど大きな室外機にはなりません。
しかし、リビングなどの広い部屋に複数台の設置をするのであれば、室内機の合計容量に合った室外機を設置する必要があるため、それだけ大きなサイズになるでしょう。
1.2 マルチエアコンの室外機に何台の室内機を付けることができる?
マルチエアコンの室外機には、メーカーにもよりますが2台から最大7台の室内機を取り付けることができます。
- 三菱電機:2台~5台
- パナソニック:2台~4台
- 日立:2台~4台
- ダイキン:2台~5台、(ワイドセレクトマルチなら7台まで可能)
2 マルチエアコンのメリット
マルチエアコンを導入するメリットには、設置する室外機が1台で良いということは、もうお分かりいただいていると思いますが、他にもさまざまなメリットがあります。ではどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
2.1 室外機の置き場所に困らない
エアコン1台に対しての1台の室外機の場合だと、エアコンの数の室外機が必要ですから、室外機の設置場所に困ることはありませんか?例えば、ベランダに面する部屋が3部屋ありそれぞれにエアコンを付けるとなると、ベランダには3台もの室外機を置かなければなりません。
こうなると、せっかくのベランダが室外機で狭くなってしまうという事もありますよね。また、こだわりのエクステリアでも室外機が多ければ外観が悪くなってしまうこともあるでしょう。
マルチエアコンなら室外機が1台で済みますから、こうしたことで悩むこともありません。そのサイズも、一般的なセパレートエアコンは約1200mm×約550mmのサイズで複数台分必要ですが、マルチエアコンであれば約1300mm×約800mmが1台のみ。1カ所の設置場所を考えれば良いだけですので、置き場所に困ることもありませんね。
2.2 運転開始から温風がすぐに出てくる
メーカーや室外機の種類にもよりますが、2台から最大で5台までの室内機を設置することができますし、隣り合った部屋だけでなく離れた部屋でも設置は可能です。こうした複数台の室内機を設置することのメリットとして、特に冬場に使う暖房の場合に1台が稼働していれば他の部屋ですぐに温風が出てくることです。
冬場の特に寒い時期は、暖房をつけても暖かい風が出てくるまで時間がかかることはありませんか?これは、室外機が冷えすぎてしまっているため暖房をつけてもしばらくは室外機を暖める時間がかかるためです。外気温が低ければ低いほど時間がかかります。
しかし、1台の室内機で暖房を使っていれば室外機は暖まっていますので、他の部屋で暖房をつけても温風が出るまでの待ち時間が少なくて済むのです。
2.3 室内機の種類を自由に組み合わせることができる
エアコンの室内機には、以下のような種類があります。
- 壁掛型
- 天井埋込カセット型
- 壁埋込型
- 床置型
こうした種類の中から、部屋のスペースや雰囲気に合わせながら選択することが可能です。例えば、天井埋込かセット型であれば、天井からの気流を活かすことで、窓からの熱気や冷気の侵入を抑えることが可能ですから、広いリビングでも外の気温を気にすることなく、快適に過ごすことができます。
また、インテリアに合わせて和室などであれば木目調の壁埋込型でエアコンの違和感を無くすこともできますし、冬場に底冷えするキッチンなどには床置型にすることで、足元を暖めることができますね。
2.4 購入費用を抑えることができる
一般的なエアコンを複数台設置する場合は、同じ数だけの室外機も購入する必要がありますが、マルチエアコンの場合には室外機が1台だけですので、それだけ購入費用を抑えることができます。
2.5 エアコンだけでなく床暖房やパネルヒーターもつけることができる
ダイキンで発売しているシステムマルチなら、室外機1台だけで冷暖房の室内機だけでなく、床暖房やパネルヒーターにも接続が可能になっています。エアコンと床暖房を上手に使い分けており、はじめはエアコンで室内を暖め、その後室温が安定したところで床暖房をメインに暖房を行います。じんわりと暖かい床暖房は、冬場の足元の寒さを和らげてくれますね。
3 マルチエアコンのデメリット
マルチエアコンは多くのメリットがありましたが、デメリットもあります。導入を考える前には、デメリットもしっかり確認しておきましょう。
3.1 複数台の同時運転時の能力低下
マルチエアコンで2台以上の室内機を同時に稼働する場合、室外機にはそれだけの負荷がかかりますので、それぞれの室内機の運転能力は1台で運転している時も低下してしまいます。
もちろん通常使用であれば問題がない大きさの室外機ですから、困るようなことにはなりませんが、複数台同時使用になると最大パワーでの運転は一般的なエアコンよりも劣ることになるでしょう。
3.2 室外機の故障ですべての室内機が使えない
一般的なセパレートエアコンであれば、もし1台の室外機が故障しても他の部屋のエアコンには影響は出ませんが、マルチエアコンの場合には室外機が1台ですので、もし室外機が故障をしてしまうと、室内機が設置してある前部屋のエアコンが使用できなくなります。
夏の暑い日などに、家の中でどの部屋でも冷房が使えないとなると、熱中症の危険性も出てきてしまいますね。室外機の故障リスクは大きくなってしまいます。
3.3 故障時の買い替えコストがかかる
マルチエアコンを導入する時には、1台の室外機で済むので費用を抑えることが可能ですが、故障してしまった際にはすべてのエアコンを買い替えなければならない事態になることも少なくありません。
その場合、複数台の室内機を外す工事費や、設置する工事費、そして購入するエアコン室内機の代金が一度にかかってくるため、その費用の負担はかなり大きな金額となってしまいます。
導入から10年程度は使用するエアコンですので、どういったタイミングで買い替えをするのかをあらかじめ検討しておく必要がありますね。
3.4 光熱費の負担が大きくなる
マルチエアコンの省エネ基準達成率は100%~107%前後、それに対してセパレートエアコンは110%~140%前後。マルチエアコンの省エネ性はセパレートエアコンに対して低いのです。そのため、マルチエアコンの光熱費の負担は、セパレートエアコンに比べて大きくなります。
さらに、マルチエアコンの機能性はセパレートエアコンに比べると劣ります。セパレートエアコンは毎年のように機能性や省エネ性を高めていますが、マルチエアコンはこうした開発は遅れています。それだけマルチエアコンの競争性が少ないからでしょう。
3.5 機種の選択肢が限られる
マルチエアコンは量販店などで発売がされていません。それだけ需要が少ないエアコンなのでしょう。発売しているメーカーが少ないため、それだけ選択する機種が少なくなります。そのため、マルチエアコンの導入をする際にも、さまざまなメーカーの機能性などを比較する機種が限られてしまいます。選択肢が少ないのも、マルチエアコンのデメリットと言えますね。
3.6 電気工事や配管工事が必要となる
電源についてもセパレートエアコンの場合は、室内機の近くにエアコン専用のコンセントがありますから、室内機のコンセントで室外機も稼働することになります。それに対してマルチエアコンは、室内機のコンセントは使用できませんから、室外機は独立して電源を確保する必要があります。
そのため、室外機用の外部電源がない場合は電源を確保するために、分電盤のブレーカーに空きがあればそこから室外機のところまでの配線工事、空きがなければそれに加えて分電盤のブレーカーを増やす工事も必要となりますので、工事費用がプラスされることになります。
さらに、複数台の室内機と室外機をつなげるための配管がいりますので、配管の経路が確保する必要がありますし、その工事も当然必要となります。新築であらかじめ配管を壁の中に設置するのであれば問題はありません。
また、後付けでも隣接している部屋へ室内機を取り付けるのであれば、それほど大掛かりな工事にはなりませんが、離れている部屋へ室内機を取り付ける場合は配管も長くなり、配管だらけになる可能性もあります。
4 マルチエアコンと一般的なセパレートエアコンのどちらがいいの?
マルチエアコンのメリットには、室外機が1台で済むことで、設置場所に困らないことや外観がスッキリするなどがあり、エクステリアにこだわる人には嬉しいですよね。また、室内機の種類を天井埋込型や壁埋込型などにすることもできるため、部屋のインテリアを邪魔することもないのもポイントになります。
しかし、そのデメリットとしては、複数台の稼働で冷暖房の能力低下や省エネ機能が低い、機能性がセパレートエアコンよりも劣るなど、普段の生活ではちょっとしたストレスとなる可能性もありますね。
さらに、室外機の電源に関わる電気工事や、室外機から遠い部屋への配管工事などで費用がかかってしまうこともあるので注意が必要です。なにより、室外機の故障時には室内機が全て動かなくなってしまうのは大変ですね。別の部屋で暑さをしのぐといった対処ができないので、真夏の暑さの中では生活に支障が出てくる可能性が高くなります。
住宅の外観やデザイン性を重視するのであればマルチエアコンは最適ですが、マルチエアコンかセパレートエアコンのどちらにするかを迷っているのであれば、機能性の高いセパレートエアコンの方が使い勝手が良いと言えるでしょう。
5 まとめ
住宅の構造上、マルチエアコンしか設置できない住宅もありますし、マルチエアコンにはメリットも多いですので、取り付けをする場合は業者の方と充分に相談をしながら選択するのが良いですね。
またこれから導入を考えているのであれば、メリットとデメリットを十分に比較し、自分の生活スタイルと照らし合わせて検討するようにしましょう。